2025.08.29
“多汗症”はどこから? 汗悩みで受診する目安や、汗対策のためにできること【Welpa相談室vol.35】

なんとなく身体や心のモヤモヤ・不調があっても、「いま忙しいから」「病院に行くほどでもないから」とやり過ごしてしまうこと、ありませんか? Welpa相談室は、そんなスルーしがちな心と身体の声に寄り添い、ドクターや専門家に気になるアレコレを相談できる場所。
今回のテーマは、多汗症。脇汗や手汗悩みは保険診療で治療が可能なこと、ご存知でしたか? 身近な悩みだけれどやり過ごしがちな多汗症について、その判断基準や治療法を、クリニックフォアの千原先生に教えていただきました。
▶INDEX
—“多汗症”の基準は? 受診の目安や診断指標など
—クリニックでできる多汗症治療、4つの選択肢
—脇汗対策のためにできること。日々の生活習慣や、緊張したときの対処法
“多汗症”の基準は? 受診の目安や診断指標など
—「汗に悩んではいるけれど、病院に行くほどなのかわからない」という人は多いと思います。汗の量や悩みの程度など、受診の目安はありますか?
基本的に汗の量を計るということはせず、“悩みの程度”が目安になると思います。例えば、「暑くもないのに脇汗がシャツに染みる」「緊張すると手汗でスマホが滑る」などの、日常生活に支障がある汗悩みは、立派な“症状”と言えます。市販の制汗剤などを使った対策でも改善しない場合は、気軽に皮膚科に相談してみてください。
—「多汗症」と診断される基準などはあるのでしょうか?
HDSS(多汗症疾患重症度評価尺度)という指標があります。患者さんの症状や悩みを伺いながら、以下の4段階のどこに該当するのかを診断します。スコア3または4に該当する場合は重症と考えられ、治療の対象となります。

—実際に受診されている方は、どのくらいの年代の方が、どんなお悩みでいらしていますか?
ご相談いただくお悩みには、「接客業で、お客様対応中に顔汗がダラダラ流れて恥ずかしい」「営業職で、手汗をかきすぎるので名刺交換がつらい」「学生で、テストの時に手汗が多くて解答用紙に汗が滲む」などがありますね。思春期の学生さんや、若年社会人の方の相談が多い印象です。やはり気温が高くなる6月〜9月頃の受診が多く、だいたいの目安ですが、1日に3〜5人ほどいらっしゃるかなと思います。
クリニックでできる多汗症治療、4つの選択肢
—多汗症と診断された場合、クリニックではどんな治療を受けられるのでしょうか?
治療法はいくつかあるので、症状や程度、部位や患者さんのライフスタイルに合わせてマッチするものを選んでいきます。自身の状態にあった治療を受けることで、日常の不快感やストレスを軽減できますよ。今回は代表的な治療法と、それぞれの特徴などをまとめてご紹介しますね。
①外用薬を塗る
汗を出す神経の働きを抑える作用のある薬を、汗が気になる部位の皮膚に直接塗る治療法。脇汗悩みには「エクロックゲル」「ラピフォートワイプ」を、手汗悩みには「アポハイドローション」を処方することが多いです。多汗症(正式には、原発性腋窩多汗症もしくは原発性手掌多汗症)と診断された場合には、保険適用で処方されることが多いです。
適応部位:主に脇、手
メリット:自宅で手軽にセルフケアできる
デメリット:かぶれや刺激感が出ることがある
保険適用:あり(原発性腋窩多汗症もしくは原発性手掌多汗症と診断された場合)



②内服薬を服用する
スポットに塗る外用薬とは異なり、身体全体の汗を抑える効果があります。代表的な薬はプロバンサインなどです。顔や手のひらなど、外用薬を塗りにくい部分の汗が気になる方や、広範囲の多汗症状がある方に処方します。
適応部位:全身(特に顔・手など)
メリット:全身に効果を期待できる
デメリット:口の渇き、便秘、眠気などの副作用に注意
保険適用:あり(原発性多汗症かつ重症の場合)

③ボトックス注射を打つ
ボツリヌス毒素を注入することで、汗を出す神経の働きを一時的にブロックする、ボトックス注射。効果が高く、数ヶ月持続するため、特に汗が気になる時期の集中的な治療としても。
適応部位:主に脇
メリット:効果が高く、約数ヶ月間持続
デメリット:効果は徐々に失われるため、数ヶ月ごとの注射が必要
保険適用:クリニックによって異なる。クリニックフォアでは適用なし

④交感神経を遮断する手術
手術によって交感神経の一部を遮断し、その部分の発汗を根本的に抑える治療法。対処療法的な上記①〜③とは治療のレベルが異なるため、メリット・デメリットを考えながら医師と要相談・要検討。
※クリニックフォア心斎橋では、この治療法は対応しておりません。
適応部位:特に手、脇
メリット:根本的な治療となりうる
デメリット:代償性発汗(他の部位の発汗が増える)などのリスクがある
保険適用:あり(重度の原発性多汗症の場合)※クリニックフォアでは非対応
※別途、診察料が都度掛かります。
※クリニックフォア心斎橋院で医師の診察をうけていただき、最終的な処方可否は医師の判断となりますのでご了承ください。
脇汗対策のためにできること。日々の生活習慣や、緊張したときの対処法
—クリニックでの治療と並行して、自分でもできる脇汗対策を知りたいです。例えば、生活習慣など気をつけた方が良いことはありますか?
汗の量を調節する、つまり自律神経のバランスを整えることが大切になってきます。具体的にどうするかというと、規則正しい生活を送り、よく食べ、よく寝ること。健康の“基本のキ”ではありますが、やっぱりこれが大事なのです。
—面接やプレゼン前など、緊張してしまうとジワジワと汗が滲んでしまいます。そんなときにできるストレス対策があれば教えてほしいです!
深呼吸は、思っているよりも効果的ですよ。緊張すると気付かないうちに、呼吸が浅くなったり、止まったりすることもあります。なので意識的に呼吸、できるなら深呼吸をすると自律神経も整いますし、心も落ち着くと思います。
汗の多さに悩んでいる方、脇や顔などの局所的な悩みではなく全身の汗が多い方も、ぜひ一度、皮膚科に相談してみてください。その原因が多汗症ではなく、別の病気の症状の一つとして発汗している可能性もあるからです。「汗っかきだからしょうがない」とやり過ごさずに、最適な対処法を見つけていきましょう。
Profile
●千原 真未(日本皮膚科学会認定専門皮膚科医)
オンライン診療×対面診療のハイブリッドな医療サービスを提供するクリニックフォアで、皮膚科だけではなく、内科・アレルギー科 などプライマリーケアを実践。大学病院で診療と研究に従事した経験を基に、質の高い医療情報の啓蒙を目指しさらなる研鑽 に努める。
●CLINIC INFORMATION
クリニックフォア 心斎橋 PARCO
大阪府大阪市中央区心斎橋筋 1 丁目 8-3 心斎橋 PARCO10F
https://www.clinicfor.life/shinsaibashi/
平日 11:00〜14:00/15:00〜20:00
土日祝 10:00〜14:00/15:00〜19:00
※最終受付時間は診療終了時間の各 30 分前となります
※オンラインにて来院予約が可能です。
https://reservation.clinicfor.life/c/shinsaibashi
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Staff Credit
Text Ayano Homma
Illustration Nacchin