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shinsaibashi

2022.04.08

辻愛沙子さんとarcaのメンバーに聞いた、Ladyknows Gallery「世代を超えたシスターフッド展」のこと【前編】

Welpa内にある<Ladyknows Gallery>は、これからを生きる女性たちをエンパワメントするプロジェクト「Ladyknows」初の常設ギャラリーです。4月8日からは「SISTERHOOD」をテーマにした新しい展示がスタート。クリエイティブディレクターを務める辻愛沙子さんと、展示の企画やデザインを手がけた株式会社arcaの榎倉さん、坂本さんへのインタビューをお届けします。前編では、「Ladyknows」プロジェクトにかける想いについてお話を伺いました。

Text: RCKT / Rocket Company*

―2019年にスタートした「Ladyknows」プロジェクトは、どんな想いで立ち上げられたのでしょうか。

 

辻 愛沙子(以下、辻):一言で答えるなら「社会の不均衡をなくしていきたい」という思いで始めました。私は大学在学中に仕事を始めたこともあって、“女子大生のクリエイティブディレクター”“女性起業家”と紹介される機会が多く、打ち合わせや対談の場でも「女性ならではの視点で」とか「若い女の子にはわからないかもしれないけど……」といった言葉を受け取りながら、女性という形容詞を使って表現されることへの違和感が少しずつ蓄積されていったんです。その違和感を解決しようと、男性の育休取得率、女性の正規雇用率、上場企業における女性役員の割合など、あらゆるデータと向き合っていくうちに、課題は男性でも女性でもなく社会の構造にあるのではないか、と気づきました。一方で、言論の場を見ていると、男女の分断、女性の中でも世代やキャリアによって対立構造が煽られていて、本来は主語を同じにして解決していかなければいけない社会構造の問題が、複数の主語で語られることで複雑化してしまっているなと感じて。

 

じゃあまずは共通言語としてデータを可視化しようと、Webサイトを立ち上げ、ジェンダーに関する記事やデータを発信していくことから始めてみました。「Ladyknows」は女性のためのプロジェクトではあるのですが、女性だけのプロジェクトにはしたくないという思いがあって、立ち上げのときから男性メンバーにも積極的に関わってもらいました。2019年のスタートからまだ3年目はありますが、ジェンダーに関する意識はここ2,3年で大きく進展したように思います。

―「Ladyknows」では、データを発信する以外にどんな取り組みを行なってきたのでしょう?

 


辻:先述したようなデータの可視化をしていくうちに、データだけでは表面化されない個人の痛みがあるよねという意見が出て、「Ladyknows Voice」というコラムの場をサイト内に作りました。書き手には男性も女性もいます。例えば、お子さんがたくさんいらっしゃる方、あるいはバリバリ働いている女性、色々な主語の形があって、それぞれの悩みや幸せのあり方があるということ、「女性の生き方はこう!」という答えは一つではなく無数にある、という可能性を見出せる場所にしたかったんです。

 

コロナ前は、みんなの声を交える場として月1でミニイベントも実施しました。ルッキズム、男性の育休、スポーツ業界におけるジェンダーギャップなどのテーマで、お客様を呼んでディスカッションをしてきました。イベントをやっていく過程で、ある日、女性の健康診断未受診率が高いというデータに出会ったんです。30代の女性は2人に1人が健康診断を受けていないってご存知でしたか? これは非正規雇用や賃金格差など金銭的な問題だけではなく、健康診断はどこか憂鬱で行きたくない、というマイナスのイメージもあるのかもしれない。この健康診断のハードルの高さを少しでも解決すべく、エンタメ性もあって啓発もできる「Ladyknows Fes2019」を開催しました。さまざまな企業様にスポンサーになっていただき、健康診断だけじゃなくパーソナルカラー診断や頭皮チェックを受けられたり、ワンコインで乳がん検診と子宮がん検診を受けられたりするブースを設置したところ、予想以上に多くのお客様に来場いただきました。

―Welpaに併設された<Ladyknows Gallery>では、昨年11月のオープン当初、どんな展示を行いましたか。

 

辻:コロナ後、「Ladyknows」では久々のオフラインの場だったこと、かつ3ヶ月間ほどの常設展になるということもあって、今までの「Ladyknows」を総括するような意味も込めて、ジェンダーギャップや、女性の体に関するデータを軸に、入門編のようなわかりやすい展示を意識しました。教科書ではなくギャラリーなので、楽しんでいただくことも意識しましたし、女性的な見え方だけにならないように、いわゆるステレオタイプ的な女性=赤と男性=青の中間色である紫を基調とした什器をつくりました。 


榎倉:長い目で見たときに、吊るすことも、物を置くこともできるような、可変性のある什器だったらお客様も楽しめるし、僕たちのアイディアも広がっていくのではないかと思い、自由度の高い構成にしました。心斎橋PARCOは駅直結の施設ということもあり幅広い年齢層のお客様が行き交う場所だったので、少しでも多くの人に興味を持っていただけるよう、ポップな色使いやデザインも大切にした部分です。展示を見て終わりではなく、お客様にも参加していただけるような展示にしたかったので、ギャラリーの真ん中に感想ノートを設置し、展示の感想など、さまざまな声を書いていただきました。インタラクティブな仕掛けは、第2段の展示でも引き続き行っています。


辻:展示の真ん中に掲出したのは、ハイヒールを履いて絆創膏を貼っている女性の足を描いたポスター。このイラストは、アメリカを中心に起こった「#Me Too」をもじって、女性が職場でヒールやパンプスを強要されることに異を唱える「#Ku Too」運動がモチーフになっています。表面では、足を痛めながら、それでも進まなければいけない現状に対して問題提起をして、裏面には靴を脱いでいる女性を描き、「その痛みを認識していいんだよ」というメッセージを込めました。このように、展示を見る前と見た後で、お客様が何か気づきや変化を感じてもらえるような仕掛けを第2弾の展示でも意識しています。

 

後編では、4月8日からスタートした第2弾の展示についてお聞きしていきます。お楽しみに!

 

 

 

辻愛沙子:株式会社arca CEO/クリエイティブディレクター

榎倉陸人:プランナー/プロジェクトマネージャー


株式会社arca

クリエイティブ・アクティビズムを掲げ、「思想と社会性のある事業作り」と「世界観に拘る作品作り」の2つの軸で、広告クリエイティブ制作から商品企画、ブランドプロデュース、リアルイベントまで、幅広いジャンルでクリエイティブディレクションを手掛ける。女性のエンパワメントやヘルスケアをテーマとした「Ladyknows」やコミュニティ型スクール「Social Coffee House」などの自社事業も複数運営。

 

 

Ladyknows Gallery

大阪府大阪市中央区心斎橋筋1丁目8-3 心斎橋PARCO10F

10:00~20:00 入場無料

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