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shinsaibashi

2022.04.15

辻愛沙子さんとarcaのメンバーに聞いた、Ladyknows Gallery「世代を超えたシスターフッド展」のこと【後編】

Welpa内にある<Ladyknows Gallery>は、これからを生きる女性たちをエンパワメントするプロジェクト「Ladyknows」初の常設ギャラリーです。4月8日からは「SISTERHOOD」をテーマにした新しい展示がスタート。クリエイティブディレクターを務める辻愛沙子さんと、展示の企画やデザインを手がけた株式会社arcaの榎倉さん、坂本さんへのインタビューをお届けします。後編では、新たな展示で伝えたかったメッセージや見どころを伺いました。

Text: RCKT / Rocket Company*

―4月8日からスタートした展示で「SISTERHOOD」をテーマに掲げた理由について教えてください。

 

 

 

坂本:「SISTERHOOD」とは、1960〜80年代に起こった女性解放運動のときに生まれ、女性同士の絆や連帯を意味する言葉です。そもそも「Ladyknows」プロジェクトがスタートするきっかけにもなった、女性の年齢によるセグメントや、既婚か未婚か、仕事をしているしていないなど、本来は社会構造の問題なのに、分断されてしまっている現状を打破するために、再び必要なスローガンだと思いました。世代を超えた連帯や、女性同士でエンパワメントしあう空気は大切だと考え、<Ladyknows Gallery>がその連帯を生む起点になれたらという思いでこのテーマに決めました。

 

辻:この「SISTERHOOD」にたどり着く前に、「人生100年時代」というキーワードが挙がったんです。現在、医学の発展などによって日本の女性の平均寿命は87.74歳まで上がりました。生きる期間はすごく長くなっているけど、その間も、就職、恋愛、結婚、妊娠、出産、更年期、閉経……などさまざまな問題にぶつかっていきます。<Ladyknows Gallery>に足を運ぶタイミングは人それぞれで、きっと何かしら自分の身体への不安があったり、関心を持ったときだと思うんです。自分の変化に対して一番アンテナを立てている瞬間に訪れた展示で、どんなメッセージを届けたらいいのか、何を感じて帰ってもらえたらいいかをとことん話し合いました。今年の展示を通して、女子高生って呼ばれたり、お母さんって呼ばれたり、あらゆる主語を背負わされてしまう女性たちが、その都度自分を取り戻せるようなテーマを扱いたくて、「SISTERHOOD」をテーマに据えました。

左から)坂本さん、榎倉さん、真庭さん

―今回の展示の見どころについて教えてください。

 

 

辻:展示の構成としては、女性が世代ごとにぶつかる声を可視化、声から見えてきた偏見への問題提起、世代を超えた「SISTERHOOD」の呼びかけ、という3部構成になっています。

 

坂本:まずは生の声を集めるために、「年代にまつわる、あなたが感じた違和感について教えて下さい」というアンケートを実施しました。回答期間が短かったのにもかかわらず、10代から60代まで230件もの声が集まりました。そのなかでも特に多かった声を世代別に整理して、アクリル板で展示しています。例えば、「JKブランド」という言葉や「結婚適齢期だね」「そろそろ子供産まないとね」など、私たちもハッとさせられました。

 

辻:この声を集めるプロセスでは、回答する側もしんどい気持ちになると思うので、最初は集まるかどうか不安だったのですが、想像以上にリアリティーのある回答がたくさん届いて驚きました。見えないだけで、女性たちの中に、違和感や怒りの声は確かにあるんだと実感しましたね。

 

坂本:集まった声の中から、さらに年齢にまつわる偏見を浮き彫りにしたくて、“偏見単語帳”というアクリル展示も混ぜています。例えば、「年相応」や「わきまえる」という言葉。日常生活で、知らず知らずのうちに使っているけれど、よく考えたら偏った概念なんじゃないかということを考えるきっかけになればと思っています。

 

―展示の中には大きな漫画のパネル展示があるとのことですが、どのような内容なのでしょうか。

 

 

榎倉:第1弾のときから引き継いだ、インタラクティブな仕掛けがこの漫画パネルです。 


坂本:年齢にまつわる悩みや偏見を目の当たりにした登場人物たちに、年齢なんて関係なく人生を楽しんでいる人たちがいろんな声をかけていきます。来場いただくお客様にもそのうちのひとりとして、声を伝えるステッカーを貼ってストーリーに参加していただけるような構成です。展示を通してぜひストーリーに参加をして、「年齢を重ねることは怖くない」「年を重ねるごとの楽しさがある」という感覚を体験してもらえたらと思っています。


榎倉:漫画を大きく引き伸ばすことで、視覚的にも新鮮な展示を目指しました。僕は身長が176cmあるのですが、どの高さにインタラクティブなコーナーを持って来ればお客様が参加しやすいのかは、女性メンバーの意見がとても参考になりました。そうやって、自分だけでは気づけないことをメンバーからも学んでいます。

また、今回の展示のメインポスターや漫画はすべて、社内のデザイナー(真庭りえ)がオリジナルで描いたものです。


年齢を重ねながら人生を謳歌している人に賛同するようなポジティブな台詞を、お客様にもどんどん貼っていただき、声の可視化や偏見単語帳のパートで傷ついた心を癒すコーナーになれたら嬉しいです。

 

 

 

―展示のメッセージは、特にどんな方に届いてほしいですか?

 

榎倉:このような展示は、アートギャラリーなどで展示すると、ジェンダーの問題などに関心が高い方の来場が多くなる傾向にあると思います。PARCOさんのようなパブリックな商業施設の中だからこそ、友だちや恋人同士、家族などとフラッと訪れ、考えるきっかけになると嬉しいですね。

 

辻:この展示がきっかけとなり、「SISTERHOOD」の連帯が広がっていったらいいなと思っています。ステッカーで参加できるインタラクティブな要素を入れたのも、それが狙いです。「Ladyknows Fes」や第1弾の展示でお客様が想いを書き込んでいくノートを設置しました。そのとき、お客様同士でメッセージのやり取りが生まれ、素晴らしいなと思ったんです。展示だけで完結せず、お客様同士の連帯が広がっていくことを期待しています。

 

辻愛沙子:株式会社arca CEO/クリエイティブディレクター

榎倉陸人:プランナー/プロジェクトマネージャー

坂本彩音:デザイナー/プランナー

真庭りえ:デザイナー


株式会社arca

クリエイティブ・アクティビズムを掲げ、「思想と社会性のある事業作り」と「世界観に拘る作品作り」の2つの軸で、広告クリエイティブ制作から商品企画、ブランドプロデュース、リアルイベントまで、幅広いジャンルでクリエイティブディレクションを手掛ける。女性のエンパワメントやヘルスケアをテーマとした「Ladyknows」やコミュニティ型スクール「Social Coffee House」などの自社事業も複数運営。

 

 

 

Ladyknows Gallery

大阪府大阪市中央区心斎橋筋1丁目8-3 心斎橋PARCO10F

10:00~20:00 入場無料

 

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